LINE Harnessは利用料無料のOSSです。「月0円で公式LINEのステップ配信ツールが使える」——この魅力で検討を始めた方が多いと思います。

先に、実運用している立場から結論を書きます。

運用全体は月0円になりません。ただし、有料ツールの月額(私たちの場合はUTAGEの約2.2万円)を消せるのは本当です。

私はUTAGEから2つの公式LINEアカウント(友だち計約5,000人)をLINE Harnessへ本番移行し、いまも運用しています。この記事では、その実測データで費用の内訳を検証します。机上の料金表の比較ではなく、「実際に動かしたら何にいくらかかったか」の話です。

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もくじ[ タップで開閉 ]
  1. 1費用は3層で考える
  2. 2Cloudflareは「無料枠で運用」を前提にしない
  3. 3最大のコストは、公式LINEの配信料
  4. 4見えないコスト:人の時間
  5. 5まとめ:判断式はこうなる

費用は3層で考える

「ツールが無料なら、あとは何にお金がかかるんですか?」

公式LINEの運用費用は、3つの層に分かれます。ツールの層だけ見ていると、判断を誤ります。

移行前(UTAGE)移行後(LINE Harness)実運用で分かったこと
ツール利用料月額 約2.2万円◯ 0円本当に消える。ただし決済・販売導線の代替は別途
インフラ(Cloudflare)0円× 月5ドル〜無料枠では初日に停止する規模だった(後述)
配信料(公式LINE)月額1.5万円(税別)〜× そのまま残る移行では1円も変わらない。2026年10月に料金改定あり

出典: LINE公式アカウント 料金プラン / Cloudflare D1 Pricing(2026年8月時点で確認)

つまり削減できるのはツール利用料の層だけです。残り2層は移行しても残ります。それぞれ実測で見ていきます。

Cloudflareは「無料枠で運用」を前提にしない

「公式には無料枠で動くと書いてありますよね?」

LINE Harnessの動作環境であるCloudflare D1の無料枠は、データベース読み取りが1日500万行です。数字だけ見ると、友だち5,000人には十分に思えます。

私たちの実測を書きます。運用中の全アカウント合算で、読み取りは1日約1.3億行でした。無料枠の約27倍です。

事前の見積は1日300〜400万行。「無料枠にぎりぎり収まるか、少し超えるか」の想定が、実測では30〜45倍に膨れました。

無料枠の超過は「課金」ではなく「停止」

ここが最大の落とし穴です。D1の無料枠を超えると、追加請求が来るのではなく、その日のクエリが止まります

ボットが受信に反応できなくなるので、実質的にツールごと停止です。私たちは移行前に月5ドルの有料プランへ上げていたため止まりませんでしたが、結果から見ればこれは「念のため」ではなく必須条件でした。

なぜ見積が桁で外れるのか。AI応答や自動化を使う構成では、1通の受信・1回の配信判定のたびに大量の読み取りが走るからです。「友だち数×配信数」のような素朴な計算は、実運用では通用しませんでした。

無料枠前提の移行計画は組まないでください
検証環境なら無料枠で十分です。しかし本番は、AI応答・タグ自動化を動かした瞬間に読み取り量の桁が変わります。月5ドル(Workers Paid)を最初から前提にしてください。ツール利用料2.2万円を消しに行く移行で、5ドルを惜しんで本番を止めるのは割に合いません。

最大のコストは、公式LINEの配信料

意外に思われるかもしれませんが、私たちの環境で最大の固定費はツールでもインフラでもなく、公式LINEの配信料です。

スタンダードプランは月額1.5万円(税別)で、無料メッセージは月3万通。これを超える追加メッセージは1通あたり約3円かかります。この料金は、どのツールを使っても残ります。

2026年10月1日に、追加メッセージの料金が改定される

ここで、検討中の方が知っておくべき時事情報があります。LINEヤフーは2026年10月1日に追加メッセージ料金の改定を実施します。

改定後は、月20万通までが1通3円、20万通を超えた分が1通2.5円(いずれも税別)になります。改定前は5万通を超えると通数帯ごとに単価が下がる体系だったため、月5万〜20万通を配信する中規模アカウントにとっては実質値上げです。

一方、無料枠の月3万通に収まっている規模なら、この改定の影響はありません。

出典: LINEヤフー:追加メッセージ料金改定のお知らせ(2026年8月時点で確認)

配信料を下げる鍵は、ツール側にある

配信料は通数課金なので、下げる方法は「無駄な通数を送らない」の一択です。

実は、移行の副産物でこれが起きました。LINE Harnessには反応した友だちから順に登録される仕組み上、配信対象がアクティブな友だちに絞られ、無駄な配信数が減ったのです。反応のない相手に送り続けていた分が、そのまま浮きました。

配信料はどのツールでも残る固定構造
だからこそ「誰に送らないか」を設計できるかが、実質的なコスト差になります。

見えないコスト:人の時間

最後に、料金表に載らないコストを正直に書きます。構築・保守・移行にかかる人の時間です。

  • 移行前の調査: 規約・仕様・データの照合に1〜2週間(前編に詳細
  • 移行当日: 切替自体は数分。ただし周辺作業込みで丸1日×アカウント数(後編に詳細
  • 運用開始後: デプロイ・障害調査・アップデート対応が自分側の仕事になる

私たちはこの部分を、技術を担うパートナーとの共同体制で回しています。ここを誰が担うのか決まっていないなら、月額2.2万円は「保守を外注している費用」と捉え直すこともできます。無料が高くつくケースは、実際にあります。

まとめ:判断式はこうなる

費用検証のまとめ
  1. 消せるのはツール利用料だけ(私たちの場合、月約2.2万円)
  2. Cloudflareは月5ドルの有料化が実質必須。無料枠超過は課金ではなく停止
  3. 公式LINE配信料(月1.5万円〜)はどのツールでも残る。2026年10月1日に料金改定あり
  4. 構築・保守・移行の人の時間が、料金表に載らない最大の変数
この記事の結論
LINE Harnessの費用の実態は「月0円」ではなく、「月5ドル+配信料+人の時間」。それでもツール利用料の月2万円超を消せる効果は大きい。判断式は「2.2万円の削減」対「保守体制を持てるか」です。金額は計算できます。体制は覚悟の問題です。

なお、この記事の実測値は私たちの環境(2アカウント・計約5,000人・AI応答あり)のものです。読み取り量は構成で大きく変わるため、必ず小さく動かして実測してから本番判断をしてください。

おしらせ

移行の費用対効果、一緒に計算できます

あなたの配信数・友だち数・体制で、移行が割に合うかどうか。実運用の数字を持っている立場から、判断材料を整理するお手伝いができます。
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